なにもかも半端になっているこのブログ
ネタとしては最高なはずの訓練校記録は、1年間ほとんど更新できず
この記事を書いている時点ではすでに卒業してしまっている。
2023年4月に始まった訓練は、あっという間に時間が過ぎ
とりあえず無事、木工関係の仕事に就くことができてた。
書かねばならないと頭の片隅では思っていても、なかなか手をつけられず
気持ち悪さだけがつねに付き纏っている感覚。
なんとかこの記事で締めくくるべく、まとめる事にしたい。
↓とりあえず前回の続きからざっくり記録することにする。
作業用スツール
訓練は手加工から機械加工へシフトしていく。
機械操作とホゾの基本を学ぶため、共通の製作課題としてスツールを作った。
スツールといっても、基礎を盛り込んだ内容なので、見た目的には全然いけてない・・・
主に今まで木取りでしか使っていなかった横切り丸鋸盤、昇降盤に加え、角ノミ盤を使ってホゾ組みの加工を練習するための内容になっている。
機械で仕口の加工をすると、まぁ速い。
機械で加工すると精度よく仕上がると思われるかもしれないが、それ以前の墨付け、その墨線にどれだけ近い位置で加工できるか、数字よりもどこが揃っていないといけないか、ということなどを理解していないと精度よいものは作れない。
スツールの脚にしても、木の元末(上下)や表裏をどの方向で配置するするかなども指導される。
この辺は教科書的というか、あまり実務的ではないかもしれないが、意識すべき点ではあると思う。
素人DIYではまったく考えもしなかったことを意識するようになっただけでも成長と言えるだろう。
スツール自体の材料はアルダー。
フレームは後術するインターン先で教えてもらった柿渋と墨汁を混ぜたもので塗装。
座面形状は自由なので、シューメーカーのような形状を削ってみたくて、真似てみた。
色と形状から和シューメーカーとでも言える感じ。
仕上がりは別として、実際に削って、形にする過程を知ることで、やる前と後では自分の頭の中が一気にアップデートされたような感覚になる。
インターン
10月頃には希望者はインターンに行かせてもらえる。
もちろん受け入れ先は自分で見つけて、先方に受け入れを承諾してもらう必要はある。
自分は奈良の山奥のとある木工所に行かせてもらった。
ここは主にペーパーコードを編んだ椅子を作っているところで、社長がデンマーク家具デザインが好きということもあり、
自分好みの格好いい椅子を作っていたため、行かせてもらうことになった。
インターン中には、製品になる材料の機械加工や、ペーパーコード網など、実際に製品にする作業工程を体験させてもらえた。
訓練と違うと感じたのは、数の多さと作業スピードの速さ。
当然製品作りとなると、同じパーツが何十本とあるわけで、プレーナーひとつ通すだけでも、作業がめっちゃ早い。
訓練で同じようにやるのは難しいかもしれないが、スピードを意識して作業するのはあらためて大事なことだと感じた。
その木工所の社長は自分と同い年でありながら、従業員を雇い、グッドデザイン賞などを獲得したオリジナル商品を考案するなどただただすごいと感心させられることばかり。
ただ、すんなり今の状況に到達したわけではなく、過去に2回企業に失敗しているのだそう。
失敗とはつまり自営業を始めるが、資金が底をついてしまう状態。
その失敗の原因は、ただただ勉強不足だったから、だそう。
2回の失敗のあと、勉強の必要性を感じたその社長は、2年で200冊の本を読んだとのこと。
それだけ本を読むと、同じような内容がなんども出てきて、多くの人が企業で失敗しやすい事例や、できていないことを知ることができて、それだけでも失敗する可能性を減らすことができる、と教えてもらった。
同い年だが、木工の先輩として、人間としても尊敬できる部分多く、かなり良い体験となった。
インターン精度は訓練校に行くメリットの一つと言える。
余談だが、インターン4日目、帰ろうとして車がパンクしていることがわかり、携帯が圏外の中、真っ暗な山奥でレッカー車を待ったのは良い思い出になった。
販売会
訓練校でのもっともビッグイベントとなる年明けに行われる販売会。
椅子やテーブル、キャビネットや小物類などから自分が作りたいジャンルを選択して、実際お客さんに買ってもらえる家具を作る。
自分はかねてより椅子が作りたかったので、ペーパーコードの椅子を作る事にした。
椅子を作る場合は1/5モデルから作ることが必要となる。
CADで描いた図面を1/5で出力して型紙を作り、それからパーツを切り出す。
ちなみに別にCAD図面にこだわる必要はない。
1/5は厚紙作製でもOKだが、自分はせっかくなので木で作ってみた。
座面と背もたれをペーパーコードで編むつもりで、背もたれは両面とも綺麗に編む必要があったので、シミュレーションをかねて、100均で買った糸で編みまで再現。
束の力はすごいもので、初めフレームの接合部は瞬間接着剤だけで固定していたが、編みを進めるうちに、接合部が外れてしまい、竹串をダボのように後入れすることになってしまった。
それでも、編み終わる頃にはフレームが曲がってしまうほどの締め上がりになり、ペーパーコードはフレームの強度をあげる補助となっていることがよくわかった。
フレームができた時点で先生のOKがでれば、作製に進むことができる。
それから椅子を作る場合は原寸図の用意も必須となる。
脚に角度がついている場合は寸法を取るのが無理な場合もあるので、原寸図があるとより正確な墨付けができる。
同期の中には手書きで原寸図を描く人もいたが、手描きがしんどすぎるのでCAD図面を原寸大で印刷した。
A0サイズとかになるのでとても家庭用では無理だが、データさえあればお金を払って印刷してくれる業者がみつかり、無事手書きはせずに済んだ。
紙1枚で1500円ほど印刷代がかかったが、手間を考えると安いもん。
原寸図があるとパーツを図面にあてがってホゾの位置などを墨付けできるので、本当に楽で、定規で測るよりも正確だと思う。
で、こちらが完成品。
派手さはないが、自分なりにかなり頑張った作品。
ペーパーコードの編みなんか実質24時間かかったが、やるまえは頭の中でモヤっとしたものが、縮小モデルでのシミュレーションを確認し、実物大でちゃんと編めたことが嬉しかった。
知っているひともいるかもしれないが、フレーム自体はBorge MogensenのBM61をほぼ丸パクリしたもの(座面はかなり低くしてある)
画像をネットから拾い、写真から寸法を割り出し、JIS規格とかも参考にしながら、寸法を決め、CADに落とし込むのになかなか手間がかかったが、CADの勉強にもなったし、何より座り心地も結構良い感じになったので、かなり満足の行く仕上がりとなった。
もちろん作るのにかなり時間を要したが・・・。
肝心の販売会でも無事貰い手がみつかり売られていった。
販売会では、他に数名で企画したワークショップも行った。
当日朝までバタバタ準備となったが、なかなか賑わってくれてこれまた勉強になり、文化祭みたいな楽しさも味わうことができた。
卒業制作
2月から修了までは自主制作期間となる。
これまでは訓練課題ということもあって色々制限がかかってきたが、ここからはほんとに自由製作。
やっと好きなようにできる・・・と思いきや、2月は来年度の募集が始まり、試験日などで平日の休みが急に増える。
本来の目的である就職のため、平日の休みは大いに利用できるのだが、なんとももどかしい。
ちなみに自分は、有志5人で3月初めにイベントに出展する予定だったので、その作品作りが必要だったが、製作時間が少なくてあせり、昇降盤で指先を怪我してしまった。
幸い大事には至らなかったが、焦りと機械操作への慣れは怪我をまねくと身をもって実感した。
駅前クラフトということもあってなかなか厳しい結果になったが、ずっとイベントに参加する側になりたいと思っていたので、いい経験になった。
ただ、仕事しながらだと準備がかなり大変なことは予想がつく・・・
このイベントの翌日からデンマーク旅行に1週間いったので、卒業制作の期間は実質1週間ほどしかなく、完成させられないまま、1年間の職業訓練が終わった。
BM61レプリカをつくりたくて、終了後もボチボチ進めている。
籐編みにもチャレンジ!
就職先
同期の進路は木工関係に就職、木工以外の職種に就職、自営など色々。
そんな中自分は建具屋に無事就職が決まった。
自分で見つけた会社ではないが、同期が求人を見つけて紹介してくれた。
その同期も見学には行っていたが、候補から外れたようなので、見学に行って後日面接してもらった。
若手不足に困っていたようで、面接当日に4月から行く前提で話が進み驚いたが、とりあえず一安心ではあった。
ここを選んだ理由だが、まず通勤距離が近いこと。車で10分ほど。
あとは残業がほとんど無く、土日祝と休みも多い。
給料も他に比べ、悪くはない(もちろん前職よりは下がる)
正直なところ木工所に行きたい気持ちはあったが、妻と共働きで、子どもがまだ小さく、保育所の送り迎えなどに自分も行く必要があることなどがあり、前述の条件から、就職先として決める事にした。
建具屋ということもあり、技術は学べるだろうという思いもあった。
1年間の訓練を終えて
まず一番の感想として、本当に訓練校に通って良かったと思っている。
15年勤めた会社を退職することでキャリアはリセットされ、木工業界という給与水準が低いとされる業界に入ることにはなるが、自分がやりたいと思ったことにむかって勉強する日々は、ほんとに充実した日々だったし、自分で道を選択して進み始めたということがひとつの自信になった気がする。
一度社会人になると働き続けることが常識とされているが、学生期間のような期間を設けることは、今後の人生をあらためて考える時間をとることができる貴重な1年なる。
(この記事を書いている時点で、すでに仕事は始まっていて、キャリアをリセットすることの大変さを実感しているところではあるが、1歩づつ進むしかない)
家族がいる身としては、協力してもらうことが前提となるが、もし職業訓練に行くことが迷っている人がいたら、是非行くことをおすすめする。
同期との出会いは新たな縁ができるし、自分がいった訓練課は業種がらOBの人とのネットワークがあり、そこも訓練校に入る大きなメリットになる。
この1年のことは、今後の人生でも必ずプラスになると確信している。
(余裕があれば、訓練校のメリット・デメリットをまとめれたらと思う)